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『大佐用』

バイオ牛鬼絵巻の妖怪名よみ

バイオ牛鬼絵巻というのは吾々による戯称であって、『妖怪絵巻』(18-19c?)が絵巻物本体に貼られた紙片および箱書きにみられる外題である。東洋大学付属図書館におさめられており、『妖怪見聞』図録(2011)、『存在の謎に挑む哲学者井上円了』(2012)にて写真図版は確認することが可能です。

後絵巻紀(Upper Emaki period)の中でも、特殊な位置付けが可能な絵巻物で大半は狩野家の妖怪絵巻物に準じて描かれてるが、相当に基本線を逸脱しており、バイオ牛鬼という戯称の由来ともなってる「牛鬼」の形状のこわれぶりは、逆にどう摸写をすればそうなったのかと疑いたくなる出来栄えでもある。

いっぽう、鳥山石燕『画図百鬼夜行』『今昔百鬼拾遺』『百器徒然袋』および勝川春英『異魔話武可誌』を手本に描いたとみえるものも混入してる点から、それ相当に参考資料自体は広かったとうかがえる(尾田郷澄『百鬼夜行絵巻』も絵本からの画像妖怪の転用がみられる形式の絵巻物だが、そちらは石燕のみである) ほか、「あかなめ」「あかすい」――と垢嘗(あかなめ)を描いた絵に石燕『画図百鬼夜行』と異なったデザインが見られる点など、妖怪絵巻物と石燕・春英などの絵本との関係性について考えさせられる箇所も存在する一巻ではある。

御田鍬;さんは、春英や石燕を参考に描いてる妖怪や抜首の絵の描き方と、牛鬼や於登志、辺宇須遍などの絵の描き方に極端に落差があることなどから、この絵巻物は2名あるいはそれ以上の筆者がいるのではないかと推測している。

また、この絵巻物の冒頭には不自然な蚊帳の絵があり、失われた前半部分などがまだあったかも知れぬ。

呼び名備考
火輪蔵(くわりんざう)春英
火車(くわしや)春英
怪鬼(くわいき)石燕『百器徒然袋』。塵塚怪王。
泥田坊(どろたぼう)石燕『今昔百鬼拾遺』
目競(めくらべ)石燕『今昔百鬼拾遺』
奴礼女(ぬれおんな)狩野妖怪絵巻。全体像であることや雨の描き込みから絵巻物参考といえる。
山彦(やまびこ)狩野妖怪絵巻。
黒塚(くろつか)石燕『画図百鬼夜行』
雨女(あめおんな)石燕『今昔百鬼拾遺』
抜首(ぬけくび)狩野妖怪絵巻物。
白粉婆々(?)継目で文字が切れており傍訓はわからぬが「おしろいばば」だろう。
石燕『今昔百鬼拾遺』。白粉婆。
計宇古都奈之(けうこつなし)石燕『今昔百鬼拾遺』。狂骨。
加可末宇(かがまう)狩野妖怪絵巻物。がごぜ。「ががもう」の意と見える。
本所之大阿多満(ほんじょのおほあたま)春英
産女(うぶめ)狩野妖怪絵巻。
山姥(やまうば)狩野妖怪絵巻。葉っぱの描き込みがひいらぎみたいにトゲトゲ。
安加祢布理(あかねぶり)あかなめ。
加津波(かつは)狩野妖怪絵巻。河童。
火車(くわしや)狩野妖怪絵巻。
塗仏(ぬりほとけ)狩野妖怪絵巻。
夢之勢(ゆめのせい)狩野妖怪絵巻。夢の精。
牛鬼(うしおに)狩野妖怪絵巻。爪や角がしっちゃかめっちゃか。バイオ牛鬼。
幽霊(ゆうれい)狩野妖怪絵巻。
奴辺波宇(ぬへつはう)狩野妖怪絵巻。ぬっぺっぽう。
於登志(おとし)狩野妖怪絵巻。おとろし。
奴羅利栗(ぬらりぐり)狩野妖怪絵巻。ぬらりひょん。「栗」(くり)と「票」(ひょう)の字の間違いと考察できるが、傍訓が「ぐり」なので筆者本人が「ぬらりひょん」と知ってて描いてるのかがあやしい。
和阿波安(わあはあ)狩野妖怪絵巻。わうわう、、あうあう。
猫股(ねこまた)狩野妖怪絵巻。三味線をひいてるかたち、尾はいっぽん。
辺宇須遍(へうすべ)狩野妖怪絵巻。
和伊羅(わいら)狩野妖怪絵巻。
於加無女郎(おかんぢよろ)春英
計宇気礼無(けうけれん)石燕『今昔百鬼拾遺』
野狐(のきつね)狩野妖怪絵巻。
里羅利火(りらりひ)狩野妖怪絵巻。ふつうは「ふらり火」
人魚(にんぎやう)やや形式が異なる構成の妖怪絵巻物のもの?
髪切(かみきり)狩野妖怪絵巻。
世宇計羅(せうけら)狩野妖怪絵巻。しょうけら。
伽古勢伊(がごぜい)狩野妖怪絵巻。がごぜ。
赤口(あかくち)狩野妖怪絵巻。赤口としてる点、チョイスが石燕からではないことは明白。
山笑(やまはらひ)狩野妖怪絵巻。やまわらわ。山童などの文字が絵巻物でも一般的。
雪女(ゆきおんな)狩野妖怪絵巻と石燕(『画図百鬼夜行』)のまんなかくらい。
阿伽吸(あかすい)あかなめ
目一坊(めひとつぼう)狩野妖怪絵巻。
犬神(いぬがみ)狩野妖怪絵巻。僧形である点、チョイスが石燕からではないことは明白。
見越入道(みこしにうだう)狩野妖怪絵巻。
和無(ワムン)狩野妖怪絵巻。うわん。乳首がへんなうわん。
文章怪(ふんせうのくわい)石燕『百器徒然袋』。文車妖妃。