「ながきよ世のとをのねぶりの」――と、お正月の初夢用の「宝船」の絵紙にもよく書き込まれていた、回文になっている和歌の上の句の5・7の部分が冒頭の宝船の絵には書かれています。
宝船の上には七福神たち(布袋・大黒・弁天・恵比寿・福禄寿・毘沙門天・寿老人)が全員乗り込んでおり、7名ともにすやすやと眠っています。風を受けてふくらんでいる帆には熨斗[のし]と如意宝珠の絵、舳先には鶴、船の近くの波間には簔毛[みのげ]も生えた亀が顔を見せていて、おめでたく縁起のよい「序開き」になっています。
4作めの百器徒然袋は、序文にあるとおり、石燕が「夢」のなかで見た妖怪たちを描いているという基本設定が敷かれているので、それにあわせて「初夢」と縁の深い「たからぶね」が選抜されていることがわかります。
up.2026.05.11
▼ながき世の…「ながき世のとおのねぶりのみなめざめ波のり舟の音のよきかな」という、上からよんでも下からよんでもおなじ音になる和歌ぢゃ
▼宝船…宝船の絵を刷っている木版の紙。まくらの下に敷いて眠ると良い初夢をみることが出来るとして、正月に売られていたぞ
▼「たからぶね」は巻末にもあって、つづいてるぞ
▼恵比寿…いつも持っている鯛[たい]も乗っているぞ
▼福禄寿…いつも連れている鹿[しか]も乗っているぞ。鹿[ろく]の音が禄[ろく]に繋げられておるのぢゃ
▼熨斗…あわびをうすく紐状に切って干したもの。贈り物に添えたり、お祝いに食べるたりする縁起物ぢゃ
▼如意宝珠…願い事が思いのままにかなう宝物ぢゃ
▼鶴・亀…鶴は千年、亀は万年の寿命を保つので、これも縁起の良いものとして、宝船には添えられることがしょっちゅうあるぞ
▼簔毛…藻などが甲にたくさん生えた様子を簔[みの]になぞらえておるぞ