19世紀に江戸の版元・金松堂(Kinsyoudo)から発売された、『おばけかるた』に書かれたふだの文句を一覧表にしたものです。この金松堂の『おばけかるた』は歌川艶長(一橋斎艶長)による作画であることが記されています。
「ひょうばん」の項目はただの備考です。延寿堂のかるたともご比較ください。
よみふだ | これかな | ひょうばん |
いどからでるさらやしき | お菊 | (取り札不明) |
ろくろくびのびゃうぶごし | ろくろ首 | 女と屏風 |
はにふむらのかさね | 累 | 鎌をくわえてます |
にかいからでるももんがあ | ももんがあ | 国芳の錦絵からの画像転用か |
ほん所のをいてけぼり | 置行堀(本所七ふしぎ) | 竜蛇が着物きてる感じの姿 |
へいからでるゆうれい | 塀から出る | 黒塀からニュー |
とこお(読み不明)まくらかへし | 枕返し | 羽織り?を着てます |
ちゃのみゆうれい | 口から血がでてます | |
りよくのしんくは | 利欲の心火 | 爪から火がぼう |
ぬき下のうぶめ | うぶめ | 柳ではなく軒下 |
るすの間に出るばけもの | 国芳の錦絵からの画像転用か | |
をかざきのばけねこ | 岡崎の化猫 | 破れ御簾から十二単の大猫顔 |
わらいはんにゃ | 笑般若 | (取り札不明) |
かくれざとお | 隠座頭 | 他のかるたの壁座頭(鍋島騒動)に少し似る |
よ (読み札不明) | (取り札不明) | |
たぬきのおどかし | 狸 | 見越し入道に化ける準備 |
れんじおわたるゆうれい | 櫺を渡る | 窓を覗き込んでます |
そらにとぶひかり物 | 光り物 | 絵柄は「心」の字の火 |
つちぐものせいれい | 土蜘蛛 | お芝居のほうらしく花魁姿 |
ねところへ出るかみひき | 寝所へ出る髪引き | 髪引きねん |
なまくさい風にばけもの | 口から火吹いてる顔 | |
らんまからはいるばけもの | 欄間に注目 | |
むまのばけもの | 馬の化物 | 着物きてます |
うみぼうずくろく(?) | 海坊主 | 黒いまんまる顔 |
ゐなむらのそでひき | 袖引き | 稲叢に顔 |
の中のばけ杉 | 化け杉 | 木の幹に顔 |
おもひつづらのばけもの | 重いつづら | 舌切雀のお宿より |
くらやみのっそり | 黒い夜空に | |
やせっこけのばけもの | やせっぽちだけど台の物狙ってます | |
まよって出るゆうれい | 流れ灌頂? | |
けひきべったり | 毛ひき | 毛女郎みたいな感じ |
ふなゆうれいひしゃくくれ | 船幽霊 | |
こどものすきなばけもの | おもちゃのだるまとかを所持 | |
えんの下にすむひとくひ | 人喰い | 国芳の錦絵からの画像転用か |
てうちん小ぞう | (提灯小僧) | てうちん(提灯) |
あぶらなめ小ぞう | 油なめ小僧 | 行灯からぺろぺろ |
さよの中山夜なき石 | 夜泣石 | 小夜の中山? |
きつねのばかしおんな | 狐の化かし女 | 狐が女に化け準備 |
ゆき女郎しろ女 | 雪女郎 | 正面顔 |
めぐま村のばけざとお | 化け座頭 | 他のかるたのめぐま村と同様の画像 |
みつ目入道大あたま | 三ッ目入道 | 正面顔、持ち物は無し |
しただしとうふ子僧 | 豆腐小僧 | 正面顔、二ッ目 |
ゑのくま大入道 | 猪熊入道 | 兜たべてるゑのくま |
ひとつ目小僧一寸ぼし | 一ッ目小僧 | きゅあんな女の子 |
ももんがあどろどろどろ | ももんがあ | 食欲ありそうにおくちあけてる |
せん中のほうず | ほうず? | にょろにょろと青くて細長いのと船 |
すりこぎにはねがはへ | 擂木鳥 | 目の玉の位置は擂るほう側 |
京のまちのかたは車 | 片輪車 | 子供かじってる |
鬼質時代上では後絵本紀しゅもく世(Upper Ehon period/Shumokuan)に位置している資料で、 「お菊」(い)や「岡崎の化猫」(を)など、あるいは「土蜘蛛」(つ)のこしらえ等、院本紀(Maruhon period)以後の発達によって人々によく知られるようになっていた要素が採用されているのはこの年代のものとして特徴のある点です。
「にかいからでるももんがあ」(に)「へいからでるゆうれい」(へ)「るすの間に出るばけもの」(る)「えんの下にすむひとくひ」(え)「れんじお(を)わたるゆうれい」(れ)の絵は歌川国芳の錦絵『百物語化物屋敷の図』(天保年間 1830-1844) に描かれた妖怪のデザインからの転用がうかがえます。
国芳の錦絵と艶長のかるたでのデザインの比較です