『画図百器徒然袋』の最初の序文は、前作に引き続いて元洲(勝武幹)が書いています。署名の箇所には「天明四甲辰春」とあり、何らかの理由でしばらくのあいだ版本の刊行が停まってたことも知れます。
目録へ|つぎへ
▼社樹[しゃじゅ]
おまつりしてある大きな樹木のこと。『世説新語』巻17にある謝幼輿[しゃようよ]が周侯(周)を社樹になぞらえた「たとえばなし」のことを引いています。
▼俳謔[はいぎゃく]
ざれごと。謝幼輿の「たとえばなし」のことを示しています。「俳する」もおなじ意味。
▼群狐所託
群狐の託するところ。峨々として高くそびえている社樹は遠くから眺めるとキレイだけれど、狐たちが社樹の根もとにはいっぱい居て聚溷(とっても汚い!)という謝幼輿の「たとえばなし」に対して周は、その汚さの度合いはそなたのこころそのままだ、と答えています。
▼図画怪状。驚駭世俗。
怪状を図画して世俗を驚駭せしむ。怪状[かいじょう]は「あやしいかたち」のこと。妖怪の絵でひとびとをおどろかせた――ということ。
▼老狐
元洲は、大きな社樹の根もとに居る「狐」に相当する――と、石燕を見立てています。『世説新語』にある「汚い」という箇所にあたる字句(聚溷や穢)は意図的に外してあるので、純粋に「狐」のみを示していることはわかります。「老狐」としているのは当時の石燕が既に70歳を超えているおじいさんなためで、自然な形容。
▼謝混[しゃこん]
「謝鯤」で、謝幼輿のこと。
▼江淹[こうえん]
梁のひとで、夢のなかで五色筆を手に入れたことで文章の能力がめきめき上がりましたが、夢のなかで「その筆を還せ」と言われて返還したところ、それからは良い文章が出なくなってしまったと――いう逸話が『梁書』のなかにあります。元洲の序文にある「江淹の筆を還すに似たり」というのは、その話を踏まえたもの。
▼勢勇[せいゆう]
『画本勢勇談』は同年(1784)に刊行されている『西遊記』を題材にした絵本。『水滸伝』を描いた『水滸画潜覧』と同様に本文としての内容の説明がきのページがあり、「絵手本」の形式で描かれている本作などとは構成が少し異なります。
up.2026.05.11

