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おに

鳥山石燕百石乳|今昔画図続百鬼

おに


「おに」には、鬼門[きもん]とソレに対応する十二支な内容も盛り込んだ填詞[かきいれ]が添えられています。

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■山の岩窟のなかに鬼

石燕は、草深い山にある岩窟[いわや]にひそむ、長い蓬髪の頭に2本の角の生えている「おに」を描いています。腰には毛皮あるいは草蓑[くさみの]のようなものをまとっています。

舞台設定としての岩窟はまるい入口で、奥行きはそこまで深くないようです。また、岩窟の右上の岩の描き方は「つるべび」の背景に描いているものと似た筆法・定型のものでもあります。

■食べている猿

「おに」は大きな口で、猿[さる]にかぶりついています。岩窟[いわや]のなかにも骨がぼろぼろと転がっており、この猿以外にも、餌食となった動物たちがだいぶいることがわかります。

填詞[かきいれ]のほうに十二支にからめた事柄をまじえていることを考慮すれば、猿を食べさせているのは「裏鬼門」にあたる「ひつじさる」の猿を意識しているとも言えそうです。

▼鬼
「おに」は、見ひらきでいっしょに描かれている「さんせい」とは「山に住んでいるもの同士」としての関係があるようです。最初のほうに山の妖怪たちがつづくのは『画図百鬼夜行』とも近い構成です。

また、「おに/さんせい」それぞれが食べているものは「猿[さる]/蟹[かに]」ですから、その点に遊びの要素も濃いようです。

▼世に丑寅[うしとら]の方を鬼門[きもん]といふ
よくない方角だとしばしば語られる「鬼門」と呼ばれる方角は、十二支で示せば「うしとら」の方角(東北)にあたります。

四方向に「門」とされる方角はあって、鬼門(東北・艮・うしとら)/人門(西南・坤・ひつじさる)/天門(西北・乾・いぬい)/風門(東南・巽・たつみ)が設定されていました。

▼今 鬼の形を画[ゑが]くには
現在、「おに」のかたちを絵に描くときには――ということ。

▼頭[かしら]に牛角[うしのつの]をいただき 腰に虎皮[とらのかは]をまとふ
頭に牛の角、腰に虎の皮のふんどしをまとっている一般的な「おに」のデザイン。これらは仏画を通じて「鬼神」や「獄卒」の画像要素が摂取されて、日本では「おに」のデザインとしても定着して来ました。

▼是 丑[うし]と寅[とら]との二つを合せてこの形をなせりといへり
「鬼門」にあたる「うし」と「とら」の要素を掛け合わせて絵に描かれている「おに」のかたちが出来上がった――とする語り方は、「鬼門」ありきのこじつけとして古くから存在していたようで、新井白蛾『牛馬問』(1756)の「天狗鬼」という項にも「和俗に丑寅の間を鬼門と号し人々恐れ避る所なれば 是を表して牛の頭にかたどり腰より以下は虎にかたどる 後人ますます異形を工[たくみ]て 丹青をほどこす 虎の皮の犢鼻褌[ふんどし]故[ゆへ]あるかな 一笑々々」――と見られます。

石燕のこの填詞[かきいれ]も、「おうまがとき」を王莽[おうもう]と結びつける語源説話と同様、当時一般的に「よく語られがちだった」ソレを、おもしろがりつつ載せたものだと言えます。

この点は、頭に「角」は描いているものの、ハッキリとは「虎の皮のふんどし」をまとわせていないかたちで石燕が「おに」の絵を描いている点とも、あわせて考える必要はあります。


up.2026.06.23

■鬼…書言字考節用集




▼鬼門…東北(艮・うしとら)の方角のこと。よくない方角として古代から用いられて来たものだが、これは大陸の気象環境によるところの大きいもので(東北の方角から強い風が押し寄せて来る構造がある)日本の場合、環境が異なるので実態にあってるものではないという点は古くから取沙汰されている点でもあるぞ
▼蓬髪…ほうはつ。おどろに、もしゃくしゃ生えた髪の毛
▼骨…頭蓋骨もあれば肋骨もあるぞ
▼裏鬼門…西南(坤・ひつじさる)の方角のこと。鬼門の真逆の方角ということからの呼び方なダケで本来は「人門」[じんもん]というのが正しい方位の名称だぞ



▼猿・蟹…さるかに合戦を連想することも容易ぢゃ
▼天狗鬼…『牛馬問』の「天狗鬼」の項は、天狗や鬼の絵のかたちをキチンとつくりあげたのは大隅という大工の祖父や古法眼(狩野元信)であるというはなしを紹介している文章だぞ。「古老の物語に」とはじめにあるので18世紀前半には既に、むかしからそういうことが語られていたということも知られるのぢゃ
▼虎の皮…「しゅてんどうじ」の絵に描かれている手下の鬼は、「おに」の絵とは異なって虎の皮の腰巻をつけているのが確認出来るぞ。どういう基準で服装の変更をしているのかはよくわからぬのぢゃ