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つるべび

鳥山石燕百石乳|画図百鬼夜行

つるべび

釣瓶火

「つるべび」は、呼び名のみが絵に添えられています。

まえへつぎへ

■おりつつある釣瓶火

石燕は、画面右側から突き出した岩から出ている松のさがり枝から、ぶらぶらと下にさがって来た「つるべび」を描いています。長くまっすぐ、上から尾を引いてぶらさがって来た火の玉のなかに目・鼻・口がついており、顔のある火になっています。

このような下にぐにゃぐにゃ、あるいはぎざぎざと下がっているダケの樹木の枝は、絵画の技法書などでは「さがりえだ」(降枝)と称されていて、粉本[ふんぽん]を見て学ぶ練習課題のひとつになってもいましたし、うまい按配で構図をつくりやすくするための便利な描き方なども、しばしば伝授されていました。

■ぶらぶらさがってくる釣瓶おろし

山岡元隣『百物語評判』(1686)の「西の岡の釣瓶をろし」(巻1)で紹介されている「つるべおろし」という火の妖怪を参考にして、石燕は「つるべび」を描いたのだろうと考えられています。

木から、鞠[まり]のようにまるい大きな火の玉が、おりたりのぼったりするというもので、その上下の動きを水をくむときに井戸で使う釣瓶[つるべ]に見立てた呼び名なのだそうです。

同書には挿絵もあり、目・鼻・口のついた大きい火の玉が、木のうえのほうから唐傘をさして歩いていた人間のほうに降りて行こうかなとしている様子を描いており、「つるべおろし」と「つるべび」のデザインも近しいものになっています。

▼釣瓶火
「つるべび」は、見ひらきにいっしょに描かれている「ふらりび」とは火の妖怪同士の一対になっています。

山岡元隣『百物語評判』(1686)では、ほかにも「うばがび」(巻4)が紹介されてもおり、そちらも『画図百鬼夜行』では描かれています。


up.2026.06.12

■釣瓶火




▼顔のある火…ひとつ前の「そうげんび」は僧侶の「頭」そのものが火のなかにあるかたちだったが、こちらは火の玉に目・鼻・口があるという描き方のもので差異が出ているぞ
▼さがりえだ…『画筌』などにある呼び名ぢゃ
▼粉本…おてほん
▼つるべおろし…山岡元隣は木から火は生じるという五行の摂理を持ち出して、「つるべおろし」は大木の精が起こしている「陰火」が原因となった「ひかりもの」であろうと理屈づけているぞ。◆『百物語評判』(巻1)曰「されば其[その]光り物は大木[たいぼく]の精にて即ち木生火の理[ことはり]なり」