人面樹
「にんめんじゅ」には、漢籍にある内容に即した填詞[かきいれ]が添えられています。
まえへ|つぎへ石燕は、人間の顔のようなお花が出来る「にんめんじゅ」を描いています。本来は西の海のまた向こうの国に生えているとされているものなので「海外」な要素があってもしかるべきなのですが、特にそういった風味は「絵」としては加味されていません。
「にんめんじゅ」の下に生えているのも、小さい笹[ささ]で、特に海外な風味はありません。
「にんめんじゅ」は西の果てにある大食国に生えているとされており、『三才図会』などに記載が見られます。大食[たあじ・だいし]の地は現代で言うならばペルシャなどの方面。
『和漢三才図会』(巻14・外夷人物)では「大食」の項の挿絵にも、この木の「絵」が描かれており、基本的に石燕はその画像要素を大きく膨らませて絵づくりをしているようです。しかし、挿絵にメインで描かれている「大食国のひと」を石燕は描いておらず、ココでも「海外」な要素を意識的にぬいている措置があります。
それとは別に、『和漢三才図会』(巻88・夷果類)にも「にんめんし」(人面子)という項があり、「人面樹」という語も見られます。ただし、コチラはそういう果物がみのる木についての情報要素で構成されているもので、基本的には別々のものだと言えます。
▼人面樹
「にんめんじゅ」は、見ひらきにいっしょに描かれている「しょくいん」とは大陸に伝わる存在、また「人間みたいな顔のついてるもの」同士として描かれていると言えそうです。
こちらは、遠く離れた異国にあるとされていたものですから、単純に「大陸に伝わる」とされるものよりも世界地図の規模はさらに規模は大きくなって来ます。
▼山谷[さんこく]にあり
『和漢三才図会』(巻14・外夷人物)の「大食」にある内容から石燕は填詞[かきいれ]を構成しているようで、「山谷間有樹」という原文をやわらげてつづっています。
▼その花 人の頸のごとし ものいはずして ただ笑ふ事しきりなり
人間の顔のようなかたちの特徴的な「にんめんじゅ」のお花は、常にほほえんで咲っているとされます。言及の順番も含めて、『和漢三才図会』にある「枝上花生如人首 不解語人 借問惟笑而巳」――を下敷きにしたものであることが知れます。
▼しきりにわらへば そのまま落花すといふ
おなじく『和漢三才図会』にある「頻笑 輒凋落」(しきりにわらえば すなわち しぼみおつる)――を用いていますが、わざわざ「落花」という別の語を持ち込んでもいます。
up.2026.07.21
■人面樹(人面子)…和漢三才図会
▼大食国…「しょくいん」がキチンと「北西」の地にいると認識されていたとしたらば、大食国は「南西」にあるものとして、うまいこと対比にもなるのぢゃが、ハッキリせぬ