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妖怪要説 鬼質学紺珠

鬼質時代 現代(Contemporary)

現時点の日本の妖界の様子に至る状況の重要な転換に画像への伝承の曖昧化・食い込み(佃承を含む)の一般化がある。主にその変化をもたらした年代とそこで発生した(あるいは再生されていった)妖怪たちを現代の妖怪として取り扱っている。

いっぽう、圓國紀にあたる妖怪たちも情報としての認識数は拡大しており、それらはわいら紀などを通じても増えている。また口裂紀を通過しつつ、文明の進展に従って発生したあらたな装いの妖怪たちなども中心に拡大している。現代以後に発生したあらたな妖怪たちの画像と伝承の成分はね圓國紀以前のような明確に分離されないかたちとして存在している場合が多い。

ぬらりひょん紀(ぬらりひょんき) Nurarihyon period

江馬務、藤澤衛彦あるいは吉川観方らによる足利代(Ashikaga era)から近代(Modern era)にかけての絵巻物や絵本にみられる画像妖怪たちのまとまった蘇生・発達がつづいた頃。
圓國紀からの影響か、徳川代に発生した画像細胞のみだった妖怪が独自の進化へと進んでゆくきざしがこの紀に散見されている。

藤澤衛彦『妖怪画談全集』日本編・上(1929)にあるぬらりひょんなどの解説が、はからずも以後の時代区分での進化の種子となっていったことが命名の由来。

びろーん紀(びろーんき) Biron period

ぬらりひょん紀に発達した妖怪たちが独自の進化を果たした頃。とりわけ画像妖怪が多く栄えた。1960年代中頃を起点としておもに作家たちが雑誌の妖怪特集記事などを通じて拡大させていった。
佐藤有文『日本妖怪図鑑』(1972)などに見られるびろーん徳川代に描かれたと思われる設定のない画像妖怪にあらたな画像妖怪解説を添加することで生み出された妖怪)が命名の由来。

注意して置きたいのは、既存の画像妖怪に佃承として付された性質などが何に由来しているかである。まったくの机上の空想である場合もあるのだが
もちろん、既存のものの進化以外にも、あたらしくつくられた画像妖怪も多い。現代の妖怪の進化・変化・分化を考える上で画像妖怪にもあらたなものは増え続けていることを忘却してはならぬ。

海外からの移入も、おもに洋書あるいは映画などを通じて進んでいる。チョンチョンバックベアード

わいら紀(わいらき) Waira period

圓國紀に発達した伝承妖怪たちが独自の進化を果たした頃。前の2つの時代区分(ぬらりひょん紀、びろーん紀)で発達した画像妖怪たちも含まれているが、その多くは伝承要素を添加されたかたち――疑似伝承妖怪つまりは佃承妖怪として発達させたものが栄えた。空亡紀の直接の温床となったのは、この時代である。

山田野理夫『おばけ文庫』(1976)などに見られるわいらの説話(雄と雌で色が違う)が命名の由来である。

▼水木しげるの1980年代以後の妖怪図鑑などは、わいら紀の影響が高いものであるといえる。

口裂紀(くちさけき) Kutisake period

口裂女(くちさけおんな)などが代表として挙げられる。近代までに発達して来た伝承妖怪のうち、びろーん紀に起きた過剰な怪奇進化を経たものが多く見られるようになった頃にあたる。紫陌に唱えるところのUrban legend(都市伝説)にあたるものが増え、かつ恐怖の感情に訴えるものたのが特徴である。流言などを介して拡がる事が多いが、種類の割りに長期間にわたってそのままの状態を保って栄える数はひとにぎりであった。

こっくりさんの様相が転換したのも、口裂紀における進化にあたる。

1990年代以後は、画像要素が強いものも多くなり連鎖関係でいえば鬼・天狗・河童などのように、伝承と画像の両要素の安定を得た妖怪の数は拡大している。2000年代以後はインターネットなどを通じて変化・分化したものも出つづけている。

空亡紀(そらなしき) Soranasi period

2000年代以後、双方向性のある情報空間が日常生活のなかに生まれることによって伝承・画像どちらも共に情報密度の加速が進んでいった頃。 近代以前に発達した妖怪たちと、現代の各紀に進化した妖怪たちが混在している中で、さらに新しい進化などが見られる。 新発生であれ、進化であれ、その様相はこれまでの鬼質時代区分のなかでは徳川代の後絵本紀に近い。

ひとつの作品で空亡(くうぼう)という名で紹介された『百鬼夜行絵巻』の巻末に登場する赤くてまるい炎のかたまり(『陰陽妖怪絵巻 絵解』)が、いくつかの情報の転々を経て、最強の妖怪であるという情報にきわめて短期間で情報定着したことが命名の由来。

page ver.1 2018.1.11 妖怪仝友会