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あかじた

鳥山石燕百石乳|画図百鬼夜行

あかじた

赤舌

「あかじた」には、呼び名のみが絵に添えられています。

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■狩野系統絵巻でのあかじた

狩野家で描かれて来た妖怪絵巻物には、「あかじた」や「あかぐち」などの呼び名で描かれており、石燕の「あかじた」も、そのデザインを用いて描かれています。黒雲につつまれた大きな口を開けたデザインも重なっています。

石燕は、「あかじた」の牙を鉄漿[おはぐろ]にして描いています。

狩野家の絵巻物は妖怪のデザインのみで背景の存在しない例がほとんどです。石燕は黒雲につつまれた「あかじた」のしたには、水を出し入れするための水口[みなくち]の堰があり、周囲には葦[あし]などが生えているのが描かれていますが、「口」つながりで舞台設定に添えられたぐらいのものと見られます。

■赤舌・赤口

狩野家の絵巻物では「赤舌」とも「赤口」とも呼び名が添えられていて、デザインに対する呼び名が一定していません。

「大きな口を開けている」デザインが特徴になっている画像妖怪ですので、「口」と「舌」ドチラを採っていても大差があるわけではありませんから、特に「呼び名」による違いというものもないようです。

ことばが重なることから、暦にある「赤舌日(しゃく日)・赤口日(おおしゃく日)」であったり、暦の注釈書を通じて設定されていった「赤舌神たち・赤口神たち」に結びつけることは容易ではありますが、逆に言えば、暦のなかには明確に「赤口・赤舌・空亡」が「三毒大鬼王」、「大禍・狼藉・滅門」が「貪瞋癡の三毒神」であると示されているのに、「赤舌・赤口」ダケが使われているというのも妙な部分ではあります。

使われているとしても、単純に暦でよく見る「赤口・赤舌」という「ことば」を画像妖怪の特徴にあわせて転用をしているのみで、「赤舌神・赤口神を具体的に描いた」というレベルのものではないのでしょう。

■赤口白舌

『拾芥抄』に記されている八朔[はっさく]の日に関するおまじないのなかには「八月一日天中節赤口白舌随節滅」――という文字を書いて、日の出のまえに門に貼るというものが見られ、「赤口白舌」という文言が見られます。

モトモトは「赤口白舌」は魔物や悪魔を示している文言だという説明ダケだったようですが、暦[こよみ]についての注釈書の類には由来の物語が発生しており、『拾芥抄』にも、むかし天中楼という場所で逢引きの約束をしていたお后様がいたが、その場所に想い人は行くことが出来ず、「火神」となって天中楼を燃やし尽くした。そのとき身を護るためにお后様の用いたのが「八月一日天中節赤口白舌…」という文言だと設定されています。

こういった内容は、16世紀後半ごろには完全成立していたようですから、狩野家の絵巻物の画像妖怪に対して、そういったことばから「赤口」などの文言が、悪魔などを示すことばとして入っていても、天中楼を燃やす火神を意識して使われていても、特に不自然でも何でもないわけです。

▼赤舌
「あかじた」は、見ひらきにいっしょに描かれている「ぬっぺっぽう」とは狩野家の絵巻物に見られる独特な画像妖怪たち同士として描かれていると見られます。

ひとつ前の「あおぼうず」とは「青/赤」で色つながりの対比になっているとも捉えることは可能です。

「あかじた」や「あかぐち」も、固有名詞としてどういう妖怪であるのかという疑問に対する性質が情報層素として狩野家の絵巻物に描かれる以前の時代にも、石燕よりも後の時代にも確認出来ないため、画像妖怪としてつくられたデザインに対して、「赤舌」や「赤口」といった汎用なことばが、特徴に由来して「銘」のように添えられているぐらいの存在である、ということが理解としてはわかりやすいものなのでしょう。


up.2026.08.22

■赤舌




▼絵巻物…狩野家の絵巻物での「赤舌」と「赤口」はドチラのほうが古いのかがハッキリせぬぞ。例えば佐脇嵩之『百怪図巻』(1737)では「あか口」とあるので「あかぐち」の側なので、「舌」のほうが古いともドチラとも言えないわけぢゃ
▼鉄漿…お歯黒。涅歯。鉄などを用いて歯を黒く染めること「かね」や「つけがね」とも
▼八朔…8月1日のこと
▼日の出の前…◆『拾芥抄』曰「八月一日 日出以前 書 八月一日天中節赤口白舌随節滅 押門(陰陽秘方)」
▼天中節…元日のことを示すと説明されるぞ。◆四時堂其諺『滑稽雑談』(巻15)曰「中華の道書には正月一日を天中節といへり 只和俗も此呪を書して門戸に押之 拾芥抄によるならし」 ▼赤口白舌…この箇所のみがおまじないとして活用されていることもあるようぢゃ。◆『近江蒲生郡志』(巻6・東桜谷村・2388「棟札銘文」裏面)曰「赤口白舌随時滅」
▼随節滅…この箇所が「随時滅」となっていることもあるぞ。◆『大灯国師語録』曰「八月一日天中節赤口白舌随時滅」
▼天中楼…この説話は『拾芥抄』のほかに『明文抄』などにも見られるし、『和漢三才図会』(巻4・時候類)の「八朔」の項でも普通に記載されているぞ。◆『拾芥抄』曰「昔大国后 於天中楼有契事 其人依不遂素懐 忽成火神 焼天中楼 之時后呪云 八月一日天中節赤口白舌随節滅」◆『明文抄』曰「昔大国后 於天中楼有契事 其人依不遂素懐 忽成火神 天中楼之時后呪云 八月一日天中節赤口白舌随節滅 成此呪之時火滅」
▼赤舌…赤口[しゃく]・小赤とも。それぞれの月に設定されている最初の日から8日きざみにまわってくるぞ
▼赤口…大赤口[おおしゃく]・大赤とも。それぞれの月に設定されている最初の日から6日きざみにまわってくるぞ
▼大禍・狼藉・滅門…それぞれの頭字をならべて「大狼滅」[だいろうめつ]とも呼ばれるぞ



▼呼び名…まずおなじ画像妖怪が絵巻物ごとに「赤舌」と「赤口」ドチラともハッキリしていないことも、「妖怪の固有名詞」として浸透しておらず、呼び名があとづけなことが知れるぞ。「赤舌日・赤口日」であれば双方は別個の日でもあるので混ざるということはドチラかである特徴のない証拠になるし、先行して伝承要素があって「ひょうすべ」などのように後年に入って各地で多様に呼ばれているのなら採集報告が各地に存在せぬと立証自体が出来ないのぢゃ