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ぬりぼとけ

鳥山石燕百石乳|画図百鬼夜行

ぬりぼとけ

塗仏

「ぬりぼとけ」には、呼び名のみが絵に添えられています。

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■狩野系統絵巻でのぬりぼとけ

狩野家で描かれて来た妖怪絵巻物にも、「ぬりぼとけ」は描かれており、石燕の「ぬりぼとけ」も、そのデザインを用いて描かれています。両方の目の玉が垂れさがっているすがたなど、見た目のおおよその特徴は重なっていますが、石燕のデザインでは「頭髪」があったり、舌を突き出したりしているなど、独自に工夫されてもいるようです。

狩野家の絵巻物は妖怪のデザインのみで背景の存在しない例がほとんどです。石燕は仏壇[ぶつだん]からヌッと出現しているようなすがたで「ぬりぼとけ」を描いています。「仏」という画像要素から仏壇から出て来るような舞台設定を与えたのだと考えられます。

■みほとけ

大道具・小道具は、すべて仏事に関するものが散りばめられていて、蓮台[れんだい]のうえに載っている坐像な「仏像」も安置されていますし、お寺にあるような常香盤があったり、仏壇のしたにある棚の戸襖にも蓮[はす]の花や葉っぱの絵が描かれています。

樒[しきみ]の入った桶は「こくりばば」、数珠、伏鉦[ふせがね]と撞木[しゅもく]は「しょうごろう」にも登場する小道具です。

■肉黒

石燕の「ぬりぼとけ」は、ねずみ色の版で全身が色づけされているぐらいの処理になっていますが、モトモトの狩野家の絵巻物では、全身をかなり真っ黒に彩色しています。

大陸の西域から伝えられて来ている密教の絵画には、青・黒などに身体の彩色されている存在や、目の玉が垂れさがっている状態の人頭などが描かれていることも多いですから、画像要素のうえでの近しさを見つけることは、数多く出来るようです。

▼塗仏
「ぬりぼとけ」は、見ひらきにいっしょに描かれている「ぬれおんな」とは狩野家の絵巻物に見られる独特な画像妖怪たち同士として描かれていると見られます。

「ぬりぼとけ」という妖怪が伝承として広範囲に語られていたという形跡は見られませんから、狩野家で描かれていた「ぬりぼとけ」は、仏画に出て来る画像要素たちを寄せ合わせて、「奇妙なすがたをしたほとけさま」な画像妖怪としてデザインされたものだと考えられます。

いっぽう、狐や狸などのへんげ動物たちが、仏像やお地蔵さんに化けていろいろと人間をびっくりさせる行為自体は『今昔物語集』などの時代から非常に幅広く語られていましたから、デザイン経緯はハッキリしないものの、少なくとも「ほとけさま」を画像妖怪の題材として選択する発想源としては、そういった伝承要素が下地になっている画像妖怪であることは十二分に考えることは出来るでしょう。


up.2026.08.19

■塗仏




▼頭髪…狩野家の絵巻物での「ぬりぼとけ」はつるつるあたまで、肉髻[にくけい]や螺髪[らほつ]などの描写も存在せぬぞ
▼蓮台…蓮華座
▼常香盤…大きな格子状の蓋のついている台盤で、なかで香を焚きつづけるためのものぢゃ。「こそでのて」の絵にも大道具として描かれているぞ
▼棚…「しょうごろう」の絵では板戸になっていて、おなじような大道具であっても、細部が別の道具立てになっている点にも注目ぢゃ
▼伏鉦…敲鉦[たたきがね]とも
▼真っ黒…狩野家の絵巻物での「ぬりぼとけ」は大抵、輪郭線の墨色よりも濃い墨で彩色されているのが特徴で、真っ黒であることが強調されているようぢゃ
▼西域…西蔵・蒙古などで描かれている仏教絵画に多く見られるぞ



▼ほとけさま…石燕による「たきれいおう」も滝に出現した「不動明王」を改変した画像妖怪ぢゃ