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鳥山石燕百石乳|画図百器徒然袋

たからぶね

まえへつぎへ

▼宝船

巻末には、2面の見ひらきをつかって上巻の「たからぶね」のつづきが描かれています。

ひとつめの見ひらきに「みなめざめ」、ふたつめの見ひらきには「波のり船のおとのよきかな」――と、お正月の初夢用の「宝船」の絵紙にもよく書き込まれていた、回文になっている和歌の上の句の後半の5と、下の句の7・7が書かれています。

宝船から上陸して来た七福神たち(布袋・大黒・弁天・恵比寿・福禄寿・毘沙門天・寿老人)が松・竹・梅の植えられている海岸の庭園でたのしんでいる様子が描かれています。お酒か何かの入っている水瓶[すいびょう]や、お皿に盛られた桃[もも]や生薑[しょうが]なども描かれています。

七福神のほかにも、波間の岩の上には蓑毛[みのげ]の生えた亀たち、唐子[からこ]、宝物を山のように積んでいる大きな図体の獏[ばく]が描かれています。恵比寿といっしょにいた鯛[たい]はコチラでも登場しており、肩にかつがれています。

宝物は、大判小判・千両箱・隠れ笠・隠れ蓑・宝鑰[ほうやく]・綾錦[あやにしき]・宝袋・宝巻・宝珠・七宝・丁子・分銅・珊瑚などで、米俵[こめだわら]もたくさん積まれています。

4作めの『百器徒然袋』は、序文にあるとおり、石燕が「夢」のなかで見た妖怪たちを描いているという基本設定が敷かれているので、それにあわせて「初夢」と縁の深い「たからぶね」が選抜されていることがわかりますし、巨大な「ばく」(獏)が描かれているのも、「夢」つながりがキチンと利いています。

初摺りでは、ふたつめの見ひらきの大黒・恵比寿の奥には、ねずみ色の地つぶしの中にうすい雲から顔を出している「日の出」の太陽が色摺りで入れられています。

構成の最後に「縁起のよいもの」を置く効果は、お芝居にある「大喜利浄瑠璃」や「押戻し」などの効果と同様なもので、『今昔画図続百鬼』(実質は『画図百鬼夜行』後編)では「かねだま/あまのざこ」からの「日の出」、『今昔百鬼拾遺』でも「たきれいおう/はくたく」からの「かくれざと」であったことも、おなじことです。

『画図百器徒然袋』でも「かめおさ」のあと、「たからぶね」とその絵に描き込まれた「日の出」がつづいて本当の末尾となるのも、そのような構成を意識していたことを如実に感じることが可能です。


up.2026.06.10

▼ながき世の…「ながき世のとおのねぶりのみなめざめ波のり舟の音のよきかな」という、上からよんでも下からよんでもおなじ音になる和歌ぢゃ
▼宝船…宝船の絵を刷っている木版の紙。まくらの下に敷いて眠ると良い初夢をみることが出来るとして、正月に売られていたぞ
▼桃…神仙たちもよろこぶ果実として名高いのぢぉ
▼簔毛…藻などが甲にたくさん生えた様子を簔[みの]になぞらえておるぞ
▼唐子…布袋と共に一緒に描かれることが多く、石燕は『絵事比肩』でも「布袋」とたくさんの「唐子」たちがたのしく遊んでいる様子を描いているのぢゃ
▼獏…悪い夢を食べてくれる獣として「ばく」は広く知られたのぢゃ。「宝船」の絵とおなじく「獏」の絵も、まくらの下によく敷かれていたぞ
▼小判…金貨
▼大判…小判よりも大きいので1枚の価値が高いぞ
▼千両箱…小判をたくさん詰め込んでおける丈夫な木箱
▼宝鑰…かぎ(鍵・鈎)のこと。お稲荷さんの狐たちが口にくわえていることでも知られているぞ
▼宝袋…金嚢とも。宝物・おかねを入れておく巾着・お財布ぢゃ
▼宝珠…如意宝珠。すべての望みが叶うふしぎな珠
▼日の出…『画図百器徒然袋』の後摺りのほとんどはこの日の出の色摺りが省略されていることが多いのぢゃ。この太陽が色摺りでキチンと入っていることが初摺りの証拠にもなるぞ